2016年08月01日
<大震法>見直し検討、防災対策大きな節目 予測困難を前提に
下記、6月28日の静岡新聞
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<大震法>見直し検討、防災対策大きな節目 予測困難を前提に
静岡新聞 6月28日(火)17時16分配信
政府が中央防災会議にワーキンググループ(作業部会)を設置して見直しを検討することが28日明らかになった大規模地震対策特別措置法(大震法)。予測困難とされる南海トラフ巨大地震の危険性が高まり、精度の高い地震予知を大前提に東海地震の単独発生だけを想定してきた大震法に基づく防災対策は大きな節目を迎える。
内閣府の森本輝政策統括官(防災担当)付企画官(調査・企画担当)は「東南海地震の割れ残りがあるのではないかということで東海地震の切迫性が喫緊の課題と言われていた時代もあったが、南海トラフ全体の連動型地震が起きる可能性が高いという意見が主流を占めるようになってきた」と説明する。
大震法は1976年に当時東京大助手の石橋克彦神戸大名誉教授が提唱した「東海地震説(駿河湾地震説)」を受けて78年に成立した。立法のきっかけを作ったともいえる石橋氏も今年1月、本紙の連載「沈黙の駿河湾~東海地震説40年」で「駿河湾での大地震が次の南海トラフ巨大地震と同時に起きる可能性を考慮するのは当然だ」との見解を示した。その上で、大震法の見直しを提言し「予知を前提としない地震対策を基本にしつつ、南海トラフ沿いのどこかで異常現象が観測された場合の対応を柔軟に考えておく必要がある」と指摘していた。
■観測体制の充実を
河田恵昭関西大社会安全研究センター長(防災・減災学)の話 大規模地震対策特別措置法は、警戒宣言による新幹線の運行停止など地震予知を前提にしすぎている面があり、見直しが必要だ。一方、これまで静岡県周辺に構築してきた観測体制は、今後に生かすため和歌山県や高知県などでも充実させていく必要がある。大きな被害が想定される南海トラフ巨大地震では、どれだけ備えていても人手や物資が不足する。自治体は事前に復興計画をつくるところまで準備を進めておくべきだ。津波避難タワーを設置して住民意識が変わった地域もあり、事前に取り組むべき課題は多い。
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<大震法>「東海」単独から「南海トラフ」備え 政府が作業部会
静岡新聞 6月28日(火)17時17分配信
政府は28日、地震予知を前提に首相による警戒宣言発令などを定めた大規模地震対策特別措置法(大震法)の在り方などを検討するワーキンググループ(作業部会)を中央防災会議に設置した。東海地震の単独発生だけでなく南海トラフ巨大地震の発生の可能性が高まってきたことを踏まえ、現在は東海地域に限定されている観測体制やデータの評価体制、それに基づく防災対応や対象地域などを検討する。1978年の法制化以来、抜本的見直しは初。
作業部会は学識経験者や関係の省庁、県などで構成する予定。8月にも初会合を開き、月1回ペースで会合を重ねる。終了の目安は定めていないが、年度内の報告書とりまとめを目指す。(1)現状で南海トラフ沿いの地震の予測や異常の検知がどの程度できるか(2)その予測レベルに応じた防災対策や観測体制はどうあるべきか(3)現行で想定東海地震の影響地域(地震防災対策強化地域8都県157市町村)に限定している枠組みを広げるかどうか―などが論点になる。法改正まで必要かどうかは議論次第という。
中央防災会議は2013年、南海トラフ沿いの地震予測は難しいとする報告書をとりまとめたが、一方でプレート境界の異常がある程度大きければ検知する技術はあり、検知できた場合は地震の可能性が高まっていると言える―とも結論している。南海トラフで今後何らかの異常が検知された時の情報提供や防災対応の在り方も議論の焦点となりそうだ。
また、警戒宣言自体が住民に浸透していない上、鉄道停止や道路網のまひなどで混乱が懸念され、予知の不確実性と規制の厳しさが釣り合っていないという批判も根強い。警戒宣言時の規制の在り方も議論の対象となる。
南海トラフ沿いでは予知を前提とせずに津波対策の促進などを図る特措法「南海トラフ法」に基づき、本県を含む29都府県707市町村が推進地域に指定されている。こうした他の法律との整合性も議論される見込みだ。
■解説 議論深め 対策さらに
国が大規模地震対策特別措置法(大震法)の抜本的見直しに着手する背景の一つには将来的な南海トラフ巨大地震の「割れ残り」問題に備える面がある。もし南海トラフ巨大地震の想定震源域の一部だけが破壊し、「割れ残り」ができた場合、国内に大きな混乱が生じかねないからだ。
1854年には安政東海地震の32時間後に安政南海地震が発生した。1944年の昭和東南海地震では2年後に昭和南海地震が起きた。連動型の巨大地震が現実味を帯び、こうした時間差発生や、明らかに異常な現象が観測された時にどう備えるかが国家的な課題として浮上している。
そもそも大震法は約40年前、当時の「割れ残り」問題を受けて法制化された。「割れ残り」とされた想定東海地震は結果的に今も起きていないが、強化地域の観測体制や防災対策の整備をうたった大震法は、東海地域に世界でも類を見ない地震の監視体制を敷いた。
静岡新聞は10年前から連載などを通して南海トラフ巨大地震に備えた中長期的な監視体制や防災対策強化の必要性を訴えてきた。国が今回大震法の在り方を見直すことで対象地域が西日本に広がり、監視体制の整備などが一気に進む可能性がある。
首相の警戒宣言をも盛り込んだ大震法は国難級の巨大地震を迎え撃つ武器と言える。ただ、現状では地震予知が難しいという実情や警戒宣言時の規制の在り方、住民への啓発方法など課題は山積している。作業部会で徹底的に議論を深め、大震法を再び磨き上げることが求められている。
■不確実な情報も減災に生かして
地震防災対策強化地域判定会長の平田直・東大教授の話 現状のわれわれの地震学では不確実な情報しか出せないが、その情報を社会でどう使うかは科学とは別の議論。内閣府がその議論を始めることは大変結構なことで、好意的に受け止める。地震学の知識が社会の役に立ち、少しでも被害を減らすことに貢献することは必要だ。大いに議論していただきたい。
<メモ>大規模地震対策特別措置法(大震法) 大地震から国民の生命、身体、財産を守るため、地震予知を前提に、地震防災対策強化地域の指定や地震観測体制の強化、気象庁長官から地震予知情報を受けた首相が警戒宣言を発令する仕組みなどを定めた特別措置法。警戒宣言が発令されると、強化地域で危険地域の住民が避難を始める。鉄道やバス、航空機の運行中止や道路規制のほか、企業活動なども制限され、大地震に備える。現在は予知の可能性が唯一あるとされる想定東海地震だけを対象にしている。
<メモ>南海トラフ巨大地震 東海沖から九州沖の太平洋海底に延びる溝状の地形(トラフ)に沿って起きる可能性がある地震。東海、東南海、南海の3エリアの震源域があり、連動して起きるマグニチュード(M)9級の地震への懸念が高まっている。政府の被害想定は、巨大津波などにより被害は最大で死者30万人超、経済被害は220兆円に上るとしている。
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静岡県第4次地震被害想定(第一次報告) ― 概要 ― 平成25年6月27日を見ると
予知の取扱いについて
○これまでの本県の地震被害想定では、大規模地震対策特別措置法に基づく東海地震の警戒宣言が発令され、東海地震が予知された場合の被害予測並びに予知による被害軽減効果を推計している。
○中央防災会議(2013)が「地震予測は、地震・津波から人命を救う上で重要な技術であり、今後とも研究を進める必要がある」と指摘するように、地震の予知は大きな被害軽減効果を持つ。これまでの地震被害想定と同様に、駿河トラフ・南海トラフ沿いで発生する地震・津波については、予知された場合とされなかった場合の被害の違いについても考慮した。
と明記されている。
第4次地震被害想定調査(第一次報告)参考(PDF:4,166KB)
https://www.pref.shizuoka.jp/bousai/4higaisoutei/documents/sankou.pdf
第二次報告(本編)(PDF:9,337KB)(平成25年11月)
https://www.pref.shizuoka.jp/bousai/4higaisoutei/documents/sizuokakendai4jijisinhigaisotueidainijihoukokuhoukokusyo.pdf
〇断水率(東海地震、東海・東南海地震、東海・東南海・南海地震)
管路延長(km)被害箇所数(件)被害率(件/km) 直後 1日後 7日後 1ヶ月後
清水町 約 100 約 200 1.46 98% 96% 56% 4%
清水町 約 32,000 約 31,000 約 31,000 約 18,000 約 1,300
〇断水率(大正型関東地震)
清水町 約 100 約 30 0.22 64% 35% 22% 0%
清水町 約 32,000 約 21,000 約 11,000 約 7,000 -
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<大震法>見直し検討、防災対策大きな節目 予測困難を前提に
静岡新聞 6月28日(火)17時16分配信
政府が中央防災会議にワーキンググループ(作業部会)を設置して見直しを検討することが28日明らかになった大規模地震対策特別措置法(大震法)。予測困難とされる南海トラフ巨大地震の危険性が高まり、精度の高い地震予知を大前提に東海地震の単独発生だけを想定してきた大震法に基づく防災対策は大きな節目を迎える。
内閣府の森本輝政策統括官(防災担当)付企画官(調査・企画担当)は「東南海地震の割れ残りがあるのではないかということで東海地震の切迫性が喫緊の課題と言われていた時代もあったが、南海トラフ全体の連動型地震が起きる可能性が高いという意見が主流を占めるようになってきた」と説明する。
大震法は1976年に当時東京大助手の石橋克彦神戸大名誉教授が提唱した「東海地震説(駿河湾地震説)」を受けて78年に成立した。立法のきっかけを作ったともいえる石橋氏も今年1月、本紙の連載「沈黙の駿河湾~東海地震説40年」で「駿河湾での大地震が次の南海トラフ巨大地震と同時に起きる可能性を考慮するのは当然だ」との見解を示した。その上で、大震法の見直しを提言し「予知を前提としない地震対策を基本にしつつ、南海トラフ沿いのどこかで異常現象が観測された場合の対応を柔軟に考えておく必要がある」と指摘していた。
■観測体制の充実を
河田恵昭関西大社会安全研究センター長(防災・減災学)の話 大規模地震対策特別措置法は、警戒宣言による新幹線の運行停止など地震予知を前提にしすぎている面があり、見直しが必要だ。一方、これまで静岡県周辺に構築してきた観測体制は、今後に生かすため和歌山県や高知県などでも充実させていく必要がある。大きな被害が想定される南海トラフ巨大地震では、どれだけ備えていても人手や物資が不足する。自治体は事前に復興計画をつくるところまで準備を進めておくべきだ。津波避難タワーを設置して住民意識が変わった地域もあり、事前に取り組むべき課題は多い。
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<大震法>「東海」単独から「南海トラフ」備え 政府が作業部会
静岡新聞 6月28日(火)17時17分配信
政府は28日、地震予知を前提に首相による警戒宣言発令などを定めた大規模地震対策特別措置法(大震法)の在り方などを検討するワーキンググループ(作業部会)を中央防災会議に設置した。東海地震の単独発生だけでなく南海トラフ巨大地震の発生の可能性が高まってきたことを踏まえ、現在は東海地域に限定されている観測体制やデータの評価体制、それに基づく防災対応や対象地域などを検討する。1978年の法制化以来、抜本的見直しは初。
作業部会は学識経験者や関係の省庁、県などで構成する予定。8月にも初会合を開き、月1回ペースで会合を重ねる。終了の目安は定めていないが、年度内の報告書とりまとめを目指す。(1)現状で南海トラフ沿いの地震の予測や異常の検知がどの程度できるか(2)その予測レベルに応じた防災対策や観測体制はどうあるべきか(3)現行で想定東海地震の影響地域(地震防災対策強化地域8都県157市町村)に限定している枠組みを広げるかどうか―などが論点になる。法改正まで必要かどうかは議論次第という。
中央防災会議は2013年、南海トラフ沿いの地震予測は難しいとする報告書をとりまとめたが、一方でプレート境界の異常がある程度大きければ検知する技術はあり、検知できた場合は地震の可能性が高まっていると言える―とも結論している。南海トラフで今後何らかの異常が検知された時の情報提供や防災対応の在り方も議論の焦点となりそうだ。
また、警戒宣言自体が住民に浸透していない上、鉄道停止や道路網のまひなどで混乱が懸念され、予知の不確実性と規制の厳しさが釣り合っていないという批判も根強い。警戒宣言時の規制の在り方も議論の対象となる。
南海トラフ沿いでは予知を前提とせずに津波対策の促進などを図る特措法「南海トラフ法」に基づき、本県を含む29都府県707市町村が推進地域に指定されている。こうした他の法律との整合性も議論される見込みだ。
■解説 議論深め 対策さらに
国が大規模地震対策特別措置法(大震法)の抜本的見直しに着手する背景の一つには将来的な南海トラフ巨大地震の「割れ残り」問題に備える面がある。もし南海トラフ巨大地震の想定震源域の一部だけが破壊し、「割れ残り」ができた場合、国内に大きな混乱が生じかねないからだ。
1854年には安政東海地震の32時間後に安政南海地震が発生した。1944年の昭和東南海地震では2年後に昭和南海地震が起きた。連動型の巨大地震が現実味を帯び、こうした時間差発生や、明らかに異常な現象が観測された時にどう備えるかが国家的な課題として浮上している。
そもそも大震法は約40年前、当時の「割れ残り」問題を受けて法制化された。「割れ残り」とされた想定東海地震は結果的に今も起きていないが、強化地域の観測体制や防災対策の整備をうたった大震法は、東海地域に世界でも類を見ない地震の監視体制を敷いた。
静岡新聞は10年前から連載などを通して南海トラフ巨大地震に備えた中長期的な監視体制や防災対策強化の必要性を訴えてきた。国が今回大震法の在り方を見直すことで対象地域が西日本に広がり、監視体制の整備などが一気に進む可能性がある。
首相の警戒宣言をも盛り込んだ大震法は国難級の巨大地震を迎え撃つ武器と言える。ただ、現状では地震予知が難しいという実情や警戒宣言時の規制の在り方、住民への啓発方法など課題は山積している。作業部会で徹底的に議論を深め、大震法を再び磨き上げることが求められている。
■不確実な情報も減災に生かして
地震防災対策強化地域判定会長の平田直・東大教授の話 現状のわれわれの地震学では不確実な情報しか出せないが、その情報を社会でどう使うかは科学とは別の議論。内閣府がその議論を始めることは大変結構なことで、好意的に受け止める。地震学の知識が社会の役に立ち、少しでも被害を減らすことに貢献することは必要だ。大いに議論していただきたい。
<メモ>大規模地震対策特別措置法(大震法) 大地震から国民の生命、身体、財産を守るため、地震予知を前提に、地震防災対策強化地域の指定や地震観測体制の強化、気象庁長官から地震予知情報を受けた首相が警戒宣言を発令する仕組みなどを定めた特別措置法。警戒宣言が発令されると、強化地域で危険地域の住民が避難を始める。鉄道やバス、航空機の運行中止や道路規制のほか、企業活動なども制限され、大地震に備える。現在は予知の可能性が唯一あるとされる想定東海地震だけを対象にしている。
<メモ>南海トラフ巨大地震 東海沖から九州沖の太平洋海底に延びる溝状の地形(トラフ)に沿って起きる可能性がある地震。東海、東南海、南海の3エリアの震源域があり、連動して起きるマグニチュード(M)9級の地震への懸念が高まっている。政府の被害想定は、巨大津波などにより被害は最大で死者30万人超、経済被害は220兆円に上るとしている。
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静岡県第4次地震被害想定(第一次報告) ― 概要 ― 平成25年6月27日を見ると
予知の取扱いについて
○これまでの本県の地震被害想定では、大規模地震対策特別措置法に基づく東海地震の警戒宣言が発令され、東海地震が予知された場合の被害予測並びに予知による被害軽減効果を推計している。
○中央防災会議(2013)が「地震予測は、地震・津波から人命を救う上で重要な技術であり、今後とも研究を進める必要がある」と指摘するように、地震の予知は大きな被害軽減効果を持つ。これまでの地震被害想定と同様に、駿河トラフ・南海トラフ沿いで発生する地震・津波については、予知された場合とされなかった場合の被害の違いについても考慮した。
と明記されている。
第4次地震被害想定調査(第一次報告)参考(PDF:4,166KB)
https://www.pref.shizuoka.jp/bousai/4higaisoutei/documents/sankou.pdf
第二次報告(本編)(PDF:9,337KB)(平成25年11月)
https://www.pref.shizuoka.jp/bousai/4higaisoutei/documents/sizuokakendai4jijisinhigaisotueidainijihoukokuhoukokusyo.pdf
〇断水率(東海地震、東海・東南海地震、東海・東南海・南海地震)
管路延長(km)被害箇所数(件)被害率(件/km) 直後 1日後 7日後 1ヶ月後
清水町 約 100 約 200 1.46 98% 96% 56% 4%
清水町 約 32,000 約 31,000 約 31,000 約 18,000 約 1,300
〇断水率(大正型関東地震)
清水町 約 100 約 30 0.22 64% 35% 22% 0%
清水町 約 32,000 約 21,000 約 11,000 約 7,000 -
Posted by 清水町議会議員 松浦俊介 at 17:43
│地震・災害