2014年11月10日
高齢者住宅「介護漬け」横行 自治体5割が把握-厚労省調査
下記、10月26日と27日の静岡新聞
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高齢者住宅「介護漬け」横行 自治体5割が把握-厚労省調査
2014/10/26 静岡新聞 朝刊
高齢化を受け国が整備を進める「サービス付き高齢者向け住宅」(サ高住)など老後の住まいで、運営事業者が不必要な介護保険サービスを提供したり、自社の介護利用を入居の条件にしたりといった事態が横行し、監督する自治体の50%強が問題視していることが25日、厚生労働省の初の全国調査で分かった。=関連記事3面へ
これらの手法は「介護漬け」や「囲い込み」と呼ばれ、関連法令に触れる行為に当たる。介護サービスの種類や量は本来、利用者が自由に選べるが、運営事業者による利益優先が背景にある。
厚労省は改善命令などを積極的に出すよう自治体に促しており、サ高住を共に所管する国土交通省も9月に検討会を設置、悪質事業者の是正に乗り出す構え。介護保険の財源を無駄に使っているとして財務省が介護報酬の引き下げ圧力を強める可能性もありそうだ。
調査はサ高住と住宅型有料老人ホームについて、監督権限を持つ都道府県、政令市、中核市の計110自治体に7~8月に実施。8月末までに108自治体が回答した。
調査結果によると、家事援助や入浴回数を必要以上に増やす介護漬けや、逆に定額の報酬を得ておきながらサービスを絞る「介護渋り」が起きていると答えた自治体は52%。支給限度額いっぱいのサービスを一律に設定した事例が報告された。
囲い込みに関し「課題がある」とした自治体は54%。特定の介護事業所を利用するよう契約書などで定めていたり、自社のサービスを利用すれば家賃を割り引いたりする事例が指摘されている。
自治体からは「通報があっても証拠がない」「適当なサービスかどうか判断が難しい」と悩む声のほか、「住宅と介護で所管課が異なり、実態把握に苦慮している」と、縦割り行政の弊害を指摘する意見も上がった。
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【サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)】
高齢者が生活支援サービスを受けられる賃貸住宅。安否確認と生活相談の提供が義務付けられている。訪問介護など介護保険サービスは入居者が選んで契約する。厚生労働省と国土交通省が共に所管する高齢者住まい法で2011年に定められた。国の整備推進を受け急増しており、今年9月末時点の登録物件は4932棟、戸数は15万8579戸。運営事業者は株式会社などの営利法人が大半を占め、不動産や建設などさまざまな業種から参入している。
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表層深層=悪質業者も参入 行政の対応後手 介護施設不足が背景-高齢者住宅ビジネス
2014/10/26 静岡新聞 朝刊
老後の新たな住まいとして急速に建設が進む高齢者向け住宅。ビジネスチャンスとみて事業者の参入が相次ぐ中、一部で利益優先の運営や質の低いサービスが問題になっている。介護施設の不足が背景にあり、行政の対応は後手に回っている。
「『介護保険で費用の9割は賄われるんだから、とにかく介護サービスを使わせろ』と上司から言われた。限度額いっぱいまで自社でサービスを取り切るので『取り切り』と呼んでいた」
■取り切り管理
北海道内でサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などを手がける企業グループに雇われていた男性ケアマネジャーは、こう明かす。
男性の勤務先はサ高住としては未登録の住宅だったが、運営形態はほぼ同じで、デイサービスと訪問介護を併設。他の事業者の利用は認めず、入居者全員が介護保険サービス支給限度額の90%以上を利用するよう「取り切り管理表」という表計算ソフトを使っていた。限度額に達しない場合は、歩ける人に歩行器を貸与するなど、不必要なサービスまで提供して介護報酬を稼いでいたという。
こうした経験を持つのは、この男性だけではない。ケアマネ約6万人が登録する専門サイト「ケアマネドットコム」が今月上旬、「サ高住など高齢者住宅の運営法人に勤務経験がある」というケアマネ25人に聞いたところ、16人が同様の不適切な状態があると答えた。
■罪な補助金
2011年に制度化されたサ高住は「欧米に比べ不足している高齢者住宅を20年までに108万人分確保する」との政府目標を受け、1戸当たり最大100万円の建設補助金が出る。12年9月の登録物件は約2200棟で約7万1千戸だったが、2年間で約15万9千戸と2・2倍に増えた。
公共事業の減少を埋め合わせようとする建設会社のほか、異業種からの参入も相次ぐ“バブル状態”で、ある大手事業者は「100万円につられて深く考えずに参入し、経営が行き詰まる例も多い。補助金はある意味で罪作りだ」と指摘する。
国が建設促進に走った結果、チェック機能は追いついていない。
「物件数が多く、指導に必要な態勢が取れない」「単なるサービスの紹介なのか、利用の強制なのか、判断がつかない」。自治体を対象に厚生労働省が実施した調査では、こうした声が続出。指導基準の策定など対応を求める意見が上がった。
■しわ寄せ
悪質なサ高住が放置されている背景には、特別養護老人ホーム(特養)や、低所得者が入れる有料老人ホームが足りないという事情もある。特養の入所待機者は約52万人。サ高住は本来は自立度の高い人が入居する想定だったが、受け皿が足りないため要介護度の高い人がサ高住に流入しており、全入居者の約3割が中重度の要介護者だ。
高齢者住宅に詳しいタムラプランニング&オペレーティング(東京)の田村明孝社長は「施設やホームの不足で、低所得者や重度の要介護者がしわ寄せを受けている。悪質なサ高住の問題だけ取り上げても、高齢者の住まいの課題全体に取り組まないと意味がない」と指摘する。
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サービス多用6割超 高齢者住宅「介護漬け」
2014/10/27 静岡新聞 朝刊
高齢者が賃貸契約で入居し生活支援サービスを受けられる「サービス付き高齢者向け住宅」(サ高住)で、訪問介護やデイサービスなど介護保険サービスを3種類以上使っている入居者が60%を超えることが26日までに、厚生労働省の調査で分かった。3種類以上のサービス多用は、一般住宅に暮らす人では36%にとどまっており、サ高住入居者が大きく上回った。
サ高住の一部では、運営事業者が利益を得るため必要以上の介護サービスを提供する「介護漬け」が問題視されている。サービス多用は要介護度が重い人が多数入居していることも影響しているとみられるが、介護計画をつくるケアマネジャーを使って事業者が自社のサービスを過剰に利用させている疑いがある。
調査は8~9月、全国のケアマネ事務所のうち約2800カ所を対象に実施。同事務所がサ高住に併設されているケースだと3種類以上のサービス利用は71%に達し、6種類以上も15%あった。併設されていない場合でも3種類以上の利用が60%だった。
(共同)
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清水町にもサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)があるが、
担当課に確認したところ、
特に問題視しているようなことはないという。
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高齢者住宅「介護漬け」横行 自治体5割が把握-厚労省調査
2014/10/26 静岡新聞 朝刊
高齢化を受け国が整備を進める「サービス付き高齢者向け住宅」(サ高住)など老後の住まいで、運営事業者が不必要な介護保険サービスを提供したり、自社の介護利用を入居の条件にしたりといった事態が横行し、監督する自治体の50%強が問題視していることが25日、厚生労働省の初の全国調査で分かった。=関連記事3面へ
これらの手法は「介護漬け」や「囲い込み」と呼ばれ、関連法令に触れる行為に当たる。介護サービスの種類や量は本来、利用者が自由に選べるが、運営事業者による利益優先が背景にある。
厚労省は改善命令などを積極的に出すよう自治体に促しており、サ高住を共に所管する国土交通省も9月に検討会を設置、悪質事業者の是正に乗り出す構え。介護保険の財源を無駄に使っているとして財務省が介護報酬の引き下げ圧力を強める可能性もありそうだ。
調査はサ高住と住宅型有料老人ホームについて、監督権限を持つ都道府県、政令市、中核市の計110自治体に7~8月に実施。8月末までに108自治体が回答した。
調査結果によると、家事援助や入浴回数を必要以上に増やす介護漬けや、逆に定額の報酬を得ておきながらサービスを絞る「介護渋り」が起きていると答えた自治体は52%。支給限度額いっぱいのサービスを一律に設定した事例が報告された。
囲い込みに関し「課題がある」とした自治体は54%。特定の介護事業所を利用するよう契約書などで定めていたり、自社のサービスを利用すれば家賃を割り引いたりする事例が指摘されている。
自治体からは「通報があっても証拠がない」「適当なサービスかどうか判断が難しい」と悩む声のほか、「住宅と介護で所管課が異なり、実態把握に苦慮している」と、縦割り行政の弊害を指摘する意見も上がった。
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【サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)】
高齢者が生活支援サービスを受けられる賃貸住宅。安否確認と生活相談の提供が義務付けられている。訪問介護など介護保険サービスは入居者が選んで契約する。厚生労働省と国土交通省が共に所管する高齢者住まい法で2011年に定められた。国の整備推進を受け急増しており、今年9月末時点の登録物件は4932棟、戸数は15万8579戸。運営事業者は株式会社などの営利法人が大半を占め、不動産や建設などさまざまな業種から参入している。
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表層深層=悪質業者も参入 行政の対応後手 介護施設不足が背景-高齢者住宅ビジネス
2014/10/26 静岡新聞 朝刊
老後の新たな住まいとして急速に建設が進む高齢者向け住宅。ビジネスチャンスとみて事業者の参入が相次ぐ中、一部で利益優先の運営や質の低いサービスが問題になっている。介護施設の不足が背景にあり、行政の対応は後手に回っている。
「『介護保険で費用の9割は賄われるんだから、とにかく介護サービスを使わせろ』と上司から言われた。限度額いっぱいまで自社でサービスを取り切るので『取り切り』と呼んでいた」
■取り切り管理
北海道内でサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などを手がける企業グループに雇われていた男性ケアマネジャーは、こう明かす。
男性の勤務先はサ高住としては未登録の住宅だったが、運営形態はほぼ同じで、デイサービスと訪問介護を併設。他の事業者の利用は認めず、入居者全員が介護保険サービス支給限度額の90%以上を利用するよう「取り切り管理表」という表計算ソフトを使っていた。限度額に達しない場合は、歩ける人に歩行器を貸与するなど、不必要なサービスまで提供して介護報酬を稼いでいたという。
こうした経験を持つのは、この男性だけではない。ケアマネ約6万人が登録する専門サイト「ケアマネドットコム」が今月上旬、「サ高住など高齢者住宅の運営法人に勤務経験がある」というケアマネ25人に聞いたところ、16人が同様の不適切な状態があると答えた。
■罪な補助金
2011年に制度化されたサ高住は「欧米に比べ不足している高齢者住宅を20年までに108万人分確保する」との政府目標を受け、1戸当たり最大100万円の建設補助金が出る。12年9月の登録物件は約2200棟で約7万1千戸だったが、2年間で約15万9千戸と2・2倍に増えた。
公共事業の減少を埋め合わせようとする建設会社のほか、異業種からの参入も相次ぐ“バブル状態”で、ある大手事業者は「100万円につられて深く考えずに参入し、経営が行き詰まる例も多い。補助金はある意味で罪作りだ」と指摘する。
国が建設促進に走った結果、チェック機能は追いついていない。
「物件数が多く、指導に必要な態勢が取れない」「単なるサービスの紹介なのか、利用の強制なのか、判断がつかない」。自治体を対象に厚生労働省が実施した調査では、こうした声が続出。指導基準の策定など対応を求める意見が上がった。
■しわ寄せ
悪質なサ高住が放置されている背景には、特別養護老人ホーム(特養)や、低所得者が入れる有料老人ホームが足りないという事情もある。特養の入所待機者は約52万人。サ高住は本来は自立度の高い人が入居する想定だったが、受け皿が足りないため要介護度の高い人がサ高住に流入しており、全入居者の約3割が中重度の要介護者だ。
高齢者住宅に詳しいタムラプランニング&オペレーティング(東京)の田村明孝社長は「施設やホームの不足で、低所得者や重度の要介護者がしわ寄せを受けている。悪質なサ高住の問題だけ取り上げても、高齢者の住まいの課題全体に取り組まないと意味がない」と指摘する。
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サービス多用6割超 高齢者住宅「介護漬け」
2014/10/27 静岡新聞 朝刊
高齢者が賃貸契約で入居し生活支援サービスを受けられる「サービス付き高齢者向け住宅」(サ高住)で、訪問介護やデイサービスなど介護保険サービスを3種類以上使っている入居者が60%を超えることが26日までに、厚生労働省の調査で分かった。3種類以上のサービス多用は、一般住宅に暮らす人では36%にとどまっており、サ高住入居者が大きく上回った。
サ高住の一部では、運営事業者が利益を得るため必要以上の介護サービスを提供する「介護漬け」が問題視されている。サービス多用は要介護度が重い人が多数入居していることも影響しているとみられるが、介護計画をつくるケアマネジャーを使って事業者が自社のサービスを過剰に利用させている疑いがある。
調査は8~9月、全国のケアマネ事務所のうち約2800カ所を対象に実施。同事務所がサ高住に併設されているケースだと3種類以上のサービス利用は71%に達し、6種類以上も15%あった。併設されていない場合でも3種類以上の利用が60%だった。
(共同)
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清水町にもサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)があるが、
担当課に確認したところ、
特に問題視しているようなことはないという。