<ごみの分別ルール>守られず…自治体の「開封調査」は必要か

清水町議会議員 松浦俊介

2014年10月21日 15:58

下記、10月6日の産経新聞

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ごみの分別ルール、守られず…自治体の「開封調査」は必要か
産経新聞 10月6日(月)8時5分配信

 ごみの分別ルールが守られていないとして、家庭ごみの中身を調べ違反者を特定する「開封調査」を実施する自治体が増えている。政令指定市ではすでに札幌、横浜、千葉の各市が実施しているのに続き、京都市も来春の条例改正のための検討に入った。「プライバシー侵害」との声も上がるなか、ごみ減量のために「開封調査」は必要なのか。循環型社会に詳しい筑波大教授の西尾チヅル氏と、プライバシー問題に詳しい弁護士の板倉陽一郎氏に聞いた。

 ■「住民の不公平感を払拭」西尾チヅル氏

 --ごみの分別回収は必要なのか

 「家庭ごみ排出量が右肩上がりで増え最終処分場が逼迫(ひっぱく)する中、循環型社会形成推進基本法が平成12年に制定され、ごみの総量削減やリサイクルが本格化した。その結果、統計的にはごみの量は減ってリサイクルも進んだ。だが、ごみ処分には環境負荷がかかる。世界規模で見れば廃棄物量は増え、金属資源は枯渇寸前。国内のごみが減っているから手を緩めてよい状況ではなく、継続して取り組むべき問題だ」

 --自治体のごみ開封調査をどう考えるか

 「ごみ袋に名前を記載させたり、集積所ではなく自宅前に出させる個別収集にしたりと、排出者を明確にする自治体もある。一方、ごみ袋を開封調査する自治体では、ルール通りに分別しない排出者に対して、まず回収拒否を通じて分別の必要性を指導する。それでも協力が得られない場合は、条例に従って個別に分別方法を指導し、協力をお願いする。そのためにごみを開封して個人を特定するのであって、特に問題はないと考える」

 --横浜市の開封調査が注目を集めている

 「横浜市はもともと、家庭ごみを全量焼却していた。法施行後の15年、市民・事業者・行政が三位一体となり、ごみ削減とリサイクルの仕組み作りを行う『横浜G30プラン』に取り組んだ。市職員の意識改革をし、先頭に立って市民へ啓発活動を行った結果、多くの市民が分別回収に協力した。一方で、分別せずにごみを出す市民を放置すれば、多くの協力市民に不公平感が残ることになる。このため、横浜市はごみの分別方法の指導と、指導後も従わない排出者に過料する条例を導入した」

 --住民間の不公平感を放置するのは危険か

 「個人が労力をかけて分別回収に取り組んだ結果、リサイクルが進んだと言われても、その貢献度は不透明だ。取り組まない人が多ければ、自分が頑張っても結果は出ないという社会的ジレンマもある。分別回収に協力しない人を放置すれば、ほかの住民のやる気をそいで分別率は下がり、ごみ処理コストは増大して財政を圧迫、他の行政サービスに悪影響を及ぼすだろう」

 --開封調査は拡大すると思うか

 「ごみ焼却場や中間・最終処分場、住民構成や意識、税収とごみ処理コストなど自治体ごとに事情は異なる。他自治体で結果が出ているから導入するという制度改正では、結果は出ない。住民が実行できる分別回収ルールを作って周知し、多くの住民から理解と協力を得る。その上で、分別しない『ただ乗り住民』を指導するため開封して個人を特定するというのなら、住民から支持されるのではないか」(日野稚子)

 ■「憲法に違反する可能性」板倉陽一郎氏

 --自治体のごみ開封をどうみるか

 「分別回収が必要なことに異論はないが、個人のごみを開封する必要性があるのか疑問だ。家庭ごみはプライバシーの塊。少しの不届き者のために、他の大多数の人が潜在的なプライバシー侵害の可能性にさらされているのは問題だ」

 --自治体のなかには条例に基づいて開封を制度化したところもある

 「プライバシーは憲法で保障されている権利。もちろん無制限に認められるわけではなく、刑事事件や税務調査などでは、必要に応じて個人の権利を制限する。ただし、そのために厳しい手続き規定がある。また、新しく国が個人の権利を制限する法律をつくるときは、内閣法制局で慎重に審査し、精神的自由の制限について厳しく理由を求める。個々の自治体にはそこまでのチェック機能はなく、条例を制定すればいいというのは安易すぎる。ごみ分別のルール違反を刑法や税法の違反と同等に扱っていいのか疑問だ」

 --廃棄物の所有権はごみを出した本人にはない。守秘義務のある公務員が調査すれば問題がないのでは

 「所有権とプライバシーは別。例えば、カルテは病院の所有だが、その内容は患者の個人情報でありプライバシーにあたる。家庭ごみの中には妊娠検査薬やカツラが入っているかもしれない。ごみの開封調査は、こうしたプライバシーに関わる部分を見ずに調査することはできない。守秘義務があるからいいという理屈は成り立たず、本人にとっては、その情報を取得されることがプライバシー侵害と考えられる」

 --開封調査によって、どれだけごみが減ったかという費用対効果は明確にはわからない

 「ほとんどの人は完璧ではないにしろ、おおよそは分別しようと努力する。ただし、どんなに指導しても分別しない人は出てくる。最後の数%を徹底するために、自治体が費用と労力をかけて、全住民を潜在的なプライバシー侵害の状態に置くことに、本当に合理的な理由があるのか。費用対効果がはっきりせず、合理性のない政策は政策ではなく、宗教だ」

 --横浜市は過去に、違反者から過料も徴収している。分別する人としない人の公平性を保つのが目的だという

 「そもそも、住所と氏名の部分をシュレッダーにかけ、分別せずにごみを出せば、個人を特定できない。開封調査は『分別しないなら、中身を見ますよ』という一種の脅し。ありとあらゆる分野で、やる人とやらない人がいるのだから、住民を威嚇してまでルールを徹底させようとするのは行きすぎだ。分別回収の徹底にそこまでの公共性があるのか。訴訟になったら、憲法違反で自治体が負ける可能性もある」(村島有紀)

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当町は、家庭ごみ成分分析調査を行っている。
年に2回、沼津市クリーンセンターで対象となる地区から集められた可燃ごみの袋を一部開封し、
ごみの種類と組成の内訳、ごみの3成分についての内訳について調査している。

ちなみに昨年度9月24日堂庭と2月17日久米田に行われた分析調査の結果

<ごみの種類と組成>
紙・布 59.6 57.9
ビニール・合成樹脂 8.1 10.5
木・竹・わら類 7.1 2.0
ちゅう芥・野菜くず 24.2 27.0
不燃物 0.4 0.6
その他 0.6 2.0

<ごみの三成分>
水分 57.0 59.5
灰分 2.6 6.3
可燃分 40.4 34.2

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