【あす袴田巌さん再審判決】審理に終止符打てるか 長期化招く「法の不備」修正は
下記、静岡新聞
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【あす袴田巌さん再審判決】審理に終止符打てるか 長期化招く「法の不備」修正は
9/25(水) 7:04配信 静岡新聞
死刑事件で再審が開かれたのは袴田巌さん(88)が5件目のケースだった。袴田さんの再審と同じく、検察は先の4件全てで有罪を立証したが、裁判所の判決は無罪。そして、検察はいずれにも控訴しなかった。
袴田さんの弁護団は「無罪は間違いない」と自信を示す。懸念しているのは無罪判決が言い渡された場合に検察が控訴するか否か。前例なき控訴となれば、舞台は東京高裁に移行する。弁護団は26日の判決を前に担当検察官に控訴しないよう、こう申し入れた。「58年間の審理に終止符を打てるのは検察官、あなただ」
弁護団の戸舘圭之弁護士はオンライン署名を開始した。袴田さんも姉ひで子さん(91)も高齢だ。「まさに、命を懸けて闘っている」。2023年に東京高裁が再審開始を認める決定をした際にも、検察に特別抗告せぬよう迫る署名を展開した。賛同者は3万9千人を超え、抗告断念につながったとも言われた。「検察庁は世間の反応に敏感。たくさんの声で支えてもらいたい」と願う。
30歳で逮捕された袴田さんは14年に再審開始が認められて釈放されるまで、47年7カ月、身体を拘束された。その大半を死刑の恐怖とともに生きた。さらに、釈放から再審開始の確定までに9年。時代は昭和から平成、令和へ。袴田さんは今、自宅の外階段で昇降機を使うようになった。老いを避けることはできない。
判決を1週間後に控えた19日、日本弁護士連合会は東京・日比谷公園で市民集会を開いた。渕上玲子会長は「なぜ気の遠くなるほど時間がかかるのか。“最後の砦(とりで)”となる再審制度が機能不全を起こしているからだ」と訴えた。
再審法(刑事訴訟法の再審規定)は19カ条だけ。再審を開くか否かを判断する再審請求審の具体的な進め方が決まっておらず、担当裁判官で対応が異なる。裁判に提出してこなかった証拠を開示する義務が検察官になく、再審開始決定に対する検察官の上訴は禁止されていない。これらが請求審の長期化を招いている、と長年指摘されてきた。
再審法改正を目指す超党派の国会議員連盟に所属する稲田朋美衆院議員(自民党)は集会で、迅速な救済が困難な背景を「『人は間違うかもしれない』という謙虚さが失われている」と分析。再審法の改正を「不備の問題で、公平で公正なルールをつくるという問題」と強調し、与野党が協力していくべきだとした。
ひで子さんも駆けつけ、袴田さんが自由を奪われてきた時間を無駄にしないでほしい、と来場した2500人(主催者発表)に呼びかけた。「皆さまのお力で、再審法を改正なり、訂正なりしていただきたい」
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本日、9月議会が最終日で下記の意見書を全会一致で可決。
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令和6年9月25日
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
総務大臣
法務大臣 あて
静岡県駿東郡清水町議会議長
佐野 俊光 印
刑事訴訟法の再審規定(再審法)の改正を求める意見書
冤罪は、国家による最大の人権侵害の一つである。冤罪被害者の人権救済は、人権国家を標榜する我が国にとってはもちろんのこと、地域住民の人権を守る義務を有する地方自治体にとっても重要な課題である。
しかし、冤罪被害者を救済するための再審手続に関する法律(刑事訴訟法第四編「再審」)上の規定は、僅か19条しかなく、再審手続をどのように行うかは、裁判所の広範な裁量に委ねられていることから、再審請求手続の審理の適正さが制度的に担保されず、公平性も損なわれている。
また、過去の多くの冤罪事件では、警察や検察庁といった捜査機関の手元にある証拠が再審段階で明らかになり、冤罪被害者を救済するための大きな原動力となっているが、現状では捜査機関の手元にある証拠を開示させる仕組みについて、現行法に明文化された規定がなく、再審請求手続において証拠開示がなされる制度的保障はない。そのため、裁判官や検察官の対応いかんで、証拠開示の範囲に大きな差が生じているのが実情であり、これを是正するためには、証拠開示のルールを定めた法律の制定が不可欠である。
さらに、再審開始決定がなされても、検察官がこれに不服申立てを行う事例が相次いでおり、冤罪被害者の速やかな救済が妨げられている。再審開始決定は、あくまでも裁判をやり直すことを決定するにとどまり、有罪・無罪の判断は再審公判において行うため、検察官にも有罪立証をする機会が与えられている。したがって再審開始決定がなされたのであれば、速やかに再審公判に移行すべきであって、再審開始決定という、言わば中間的な判断に対して検察官の不服申立てを認めるべきではない。
よって国においては、冤罪被害者を早期に救済するため、次の事項について、刑事訴訟法の再審規定(再審法)を速やかに改正するよう求める。
記
1 再審請求手続の審理の適正化に資する規定を整備すること。
2 再審請求手続において、全ての証拠を開示する規定を整備すること。
3 再審開始決定に対する検察官の不服申立てを禁止すること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
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